混沌とした世の中は続いています。
民主党がどうなのかといえばわかりませんが、谷垣さんがいくら叫んでも自民党を思い出す人もさすがに減ってきたのではないかと思います。
右肩上がりの時代が世界中どこにもないという事実を受け入れる空気だけは濃厚になってきており、そんな中で消費税の増税が具体的話題になってきました。
消費税と医療費は切っても切り離せないものになるようなムードですが、だからといって、国民医療費が右肩上がりになってゆくことは、ウエルカムとも言いがたいものです。
いずれにせよ若者がより良く生きられるような社会を模索してゆくのが、年長者の努めだと思います。
そのためには、この高齢化社会で医療費が拡大されるのはしょうがないとしても、いつも言うように、病気になってから『頼る』医療から、病気にならないように『予防する』医療へとシフトされなければなりません。
ではすでに『透析』を受けられている患者さんではどうしたらいいのでしょう。
それは、やはり、血圧管理・水分管理・栄養管理(十分透析してしっかりひいた上で栄養を保つ)、そして、下に述べるCa(カルシウム)・P(リン)の管理だと思います。
今回は、我が国で進行中の、二次性副甲状腺機能亢進症を有する透析患者さん8229名を対象とした全国86施設の前向き研究『MBD-5D』の途中経過の報告を読みましたのでその報告です。
この研究には、皆さんもご存知の佐藤循環器科も参加されているので、興味をひかれて読んでみました。
iPTHが180を超す患者さん、ビタミンD(当院で言うとオキサロール注射)投与を受けられている患者さん、以上いずれか一方の条件を満たす方に対しての、3年間に及ぶ追跡調査というのが骨子です。
これらの方々に関して、入院や心血管合併症などの患者予後に影響を及ぼす因子を同定し、患者予後の改善に資することが目的です。
医学というのはやはり科学であり、医者は患者さん個人個人の状況において判断して、治療したりアドバイスしたりするのですが、
やはりデータの積み重ねという客観的なものを振り返って、それを実際の治療に還元していかないと進化はありません。
だからこういった研究は必要ですし、新しい知見を得るために、当院でもスタッフともども研鑽しております。
さて、いつも言うように、リンやカルシウム、それに伴う二次性副甲状腺機能亢進症が引き起こす疾患は、最近では骨ミネラル代謝異常症(CKD-MBD)と呼ばれております。
この疾患の何が悪いのかというと、透析患者さんの死因の第1位である心血管病変の発症と進展に深く関わっているからです。
いろいろ難しい話なので、結果のみをはしょって言うと、
やはりいったん副甲状腺の腫大(iPTHが高くなりだすと)が生じ始めると、骨ミネラル代謝異常症(CKD-MBD)のコントロールは困難になるということです。
ですから、iPTH抑制のためにも、基本のリンコントロールは最も重要ということです。
また、透析液濃度ですが、現在日本の透析施設で主流なのはCa3.0mEq/Lの透析液です。
しかし透析液のCa濃度を下げることによって、
リンコントロールのための炭酸カルシウム(当院ではカルタン)投与を増やすことができたり、
静注ビタミンD製剤(当院ではオキサロール;オキサロール投与すると血清カルシウム上昇するため、投与が制限されることがある)高用量投与が可能となるため、
iPTHおよび、CaやPのコントロール達成率も上昇したのではないかということでした。
そしてその達成率の上昇が、心血管合併症の抑制になるということが予想されます。
そんなこんなで、当院でも、従来のCa3.0からCa2.75の透析液に2012.1.13より変更しております。
この透析液に変更してから、定期採血の時のデータを見ながら、薬液や薬剤の変更をしてゆく予定です。
時には、近くを見て(週末ドライとか)、
でも、この1月という1年の始まりには、遠くの山も眺めて(大げさに言うと人生のビジョンとか)みましょう。
人間なんて来し方と行く末の間に佇んでいるちっぽけな存在で誰かさんの言うように『大河の一滴』に過ぎません。
でも、そのひとつひとつはかけがえのない何にも変えられない『一個の生命』です。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。