夢に久々にあの人が出てきた。
彼はいつも選択を迫る、
「先生、どうするの、AなのBなの、どっちどっちどっちどっち!! 早く決めなきゃみんな困るでしょ!」
そう言いながら鼻息荒く肩を揺する。手術場での出来事だ。
その言葉はあながち嘘ではない。たしかにここで自分が決めんと一緒にいる人は一瞬でも早く自分の判断を待っている。
ここでの選択者は他ならぬ自分で、その意味では自分がBOSSだ。
でも彼の性急さに、言われた自分の方が立ちすくみ、手が止まってしまい、思考はフリーズする。
選択は正しいのかもしれない、後でどっさり後悔するのかもしれない。
結果がすべてを雄弁に物語るのか。
過程が大事だよ、なんてぇのはなかなか現実世界には転がっていない話でもある。
どっちどっちどっちどっち!
自分も性急なほうの人間だとは思っている、
そして、
あれもこれもほしい、あれもこれも悩みたい、でもあれもこれも認めてほしい、あれもこれも自分の手の中においておきたい、と思っている。
だからめいっぱい努力するし、新しいものにもしょっちゅう目を向ける。手を出す。
競争社会には間違いない。
自分のペースの中でみんな生きていけばいい場合もあるし、それでは社会の中でやってけない時もある。
それを「個性」と呼ぶときは、その側面がpositiveに働いてる時だし、
「あいつは根はいいやつなんだけどね・・」というときはそいつはすでにdropoutしかけている。
烙印を押されたくない、取り残されたくない。
でもいいや、って、舞台から降りちゃった人間も知ってるけど、
それは『社会的な評価』の上での問題であり、
その本人にとっては結構マイペースで歩める、安寧であり至極幸せな道であったのかもしれない。
まあ、だれにもわからないんだけど。棺桶に首突っ込むまでは。
だけど、
だから、ヒトを、
すぐに「あいつはこうだ(バカとか淋しい奴とかいい歳して独身だとかのろまとか愚鈍とか亀とかクズとか淫乱とか)」かぎかっこでくくるのはよそうと思う。
あの人の口癖みたいな言葉をもう一つ、
「何々をしなくちゃダメだよ、この世界ではそんな甘いことは通用しないよ。いいかい。」
でも、自分があの人の何を知っているというのだ。
自分だって好きと嫌いというものさしでしか他人を測れていないことにとっくに気づいているんだ。