『ハリヤ』を手に入れてもう数ヶ月になる。ハリヤは正確には電動自転車ではなく、「電動アシスト自転車」だ。
中国では全く漕がなくっていい自転車があふれているらしいが、それが真の電動自転車で、日本ではそいつは違法である。
時速15kmまではアシストしてくれ、それ以上では自力になる。またアシスト率が確か2/3だったか。そういったものだ。
飽き易い自分にしては『自転車』は長続きしている。結構いろんなところにいった。自慢でもなんでもないが実は電動アシスト機能を使うのはほんのわずかである。ほとんどは自分の脚力で推進している。言い訳みたいだけど。車両重量は20kgを超えている。泥除け前後も、カゴも装着した。道のない河原の斜面を押して上がると相当重たいのでビックリした。そしてその『ハリヤ』の傍らをロードバイクがすごい速度で疾走しているのを見て、徐々にではあるが嫉妬のような感情も抱き始めてはいる。周りは、「ロードバイクに乗りましょうよ」とか言う。どうだろう。レースもできないし、毎日のように鍛錬するわけでもないだろう。でも、その未知の世界には触れてみたい様な気もする。じゃあはじめっからロードバイクにすればよかったのにと言われても、誰があんなばくちみたいなマシンにまたがれるっていうんだ、いきなり。アシストで坂上ったら誰かが背中押してくれてる感じなんだぜ。まあこうやって悩んでいるうちが華なのだ。そう自分に言って、電動アシスト自転車『ハリヤ』君にまたがる。のだが。
実は自転車に関しては何度も挫折歴がある。
あげれば、カヌーにパラグライダーにと、挫折はきりがないのだが・・。
MTBを砥部の自転車屋さんで買ったのが、もう20年以上前になる。
その自転車とカヌーを、車の上に渡したキャリアに積んで、四万十川を下ったこともある。
あの時のクルマはセリカ1600GTだった。
クルマで上流に上がり、カヌーを河原に置き、また下って自転車を下流にある上陸地点に置く。
またクルマで上流の出発地点に戻る。
そこからカヌーで下って自転車のある地点に上陸する。
川沿いをMTBで上がり、クルマのところまでゆき、自転車を荷台に乗せてカヌーのところまでまた下りてくるのだ。
そこでカヌーをピックアップしておんなじようなことを繰り返すのだ。しゃくとりむしだ。
霧の森高原で山を駆けたこともある。
山頂から、パラグライダーで飛んでいる人がいて、そちらにびっくりさせられたりもした。
夜はテント張ったのだが、もう高度が高いせいか寒くって寒くって・・。なに喰ったんだろ、あの時とか。
一番すごかったのは、三坂峠の上から、裏お遍路道の山道をダウンヒルとして浄瑠璃寺まですごい速度で下ったことか。
下から昇ってくる白装束の人は何事かというような顔で見ていた。
だってそれこそ弾丸のように結構見上げた目線の角度から自転車がすっ飛んでくるんだもんな。
当然途中で投げ出されて落車もした。よくケガせんかったもんだ。
若く無謀であったのだろう。そして厚顔無知だったのだ。
松山城の参道みたいなところを押して上がって、降りていたら、MTBはダメだと管理人に言われた。
彼の視線が外れたところを緩やかなダウンヒルよろしく降りた。犯罪ですね。
それから十数年、
自転車の人になろうとして、折りたたみ自転車を買った。
しかし目の前のちょっとした坂を越えて重信川を渡ることがいやで続かないのだ。
夜明けにべろんべろんで寝ていて、呼ばれて、その自転車で病院に行ったことがある。
田んぼに落ちそうになって、ふらふらで病院にたどり着いた。
仕事を済ませ、もう帰る気力もなく院長室で寝た。だのに仕事の内容は一切覚えていないのが笑える。
この国道56沿いの一段下の田んぼで落ちてても、きっと誰も発見してくれんだろうな、泥にまみれて死ぬのかな、と、悲惨な気持ちになったことだけを覚えているのだ。
そしてまた数年。
まわりの人たちが、クロスバイクやらロードレーサーを手に入れている。
キヨシローが自転車の人になったのも50歳くらいからだった。
そして、邪道な中年男は考えた、そうだ!電動自転車にすればいいんだ。
長続きすれば次にはロードレーサーが待ってるじゃないか、と。
そして紆余曲折が半年くらいを経て、
ブリジストン・リアルストリーム
パナソニック・ハリヤ
パナソニック・ジェッタ という3択にたどり着く。
意を決して自転車屋さんに行くと、たまたまパナソニックの試乗会(電動アシスト自転車9台)が開かれるという。
仕事を終え、(2009年の10月の)結婚式のスピーチを読み直し、万全を期していると、インスリンがないと透析患者さんから電話がかかる。
しかしである、病院に何でもあると思ったら大違いなのである。
伊予市の薬局まで電話して電話をかけ、「社長」K島クンに届けてもらう。
それで、また、「電動自転車、続かんと思っとるやろ、100人中99人がそう思っとるんよ」と、聞かれもしないエクスキューズを言って、
その足で試乗会にいそいそ出かける。
おお、目立たないエミフル自転車屋さんに、30度程度の斜面(大袈裟か?)が備え付けられており、
その下にずらりとパナソニック軍団が勢ぞろい。
他の自転車には目もくれず、「ハリヤに乗りに来ました」と早速またがる。
『すごい』
ホント誰かが背中から押してくれてるのだ。
球体になった檻の中でバイクに乗って走り続けるサーカスの猿みたいに、
何度も何度も、坂を上っては降りて、上っては降りて、係りの人としゃべり、また上っては降りてを繰り返すのだった。
そうやって僕は2009年10月25日、ハリヤを手に入れたのだった。