今回は、2008年JSDT版『腎性貧血ガイドライン』が出たので、それに沿って、
しかもその中の鉄についてを詳細に話させていただいた。
貧血と鉄はきっても切れないものである。ご婦人方の鉄欠乏性貧血に、やれレバーだのほうれん草だのいわれるのは昔っからの常である。
鉄はエリスロポエチンが作用して赤血球を作る際にブースターみたいに働くものなのである。
しかし鉄もうまく使わないととんでもないことになる。
そのことを踏まえて、鉄の適正値は、評価法は、投与法は、などについて概説したあと、当院でのデータを供覧した。
このあたりはうちの若いスタッフが作ってくれた。
彼とは、去年の愛媛の学会で、鉄を1/w,2/M,1/M投与した場合の貯蔵鉄としてのフェリチンはどう推移してゆくのかということを検討し発表した。あまり反響はなかったけど。
今回の検討で、やっぱり鉄は細胞毒だし、透析ごとに入れても有効利用されないから、週1回の緩徐な投与が望ましいだろう、ということには落ち着きそうだ。この辺のことは、川島病院の水口先生のデータから証明されている。しかし、ちょっと違うのは、当院の投与法は、充足したらやめるという投与法ではなく、ある程度充足しかけたら減らすというやり方であるということだ。だから、貯蔵鉄としての目標上限のフェリチンの値はできるだけ少なめに設定している。
当院での鉄投与は、マックスの投与でも週1回という生体ストレスをかけにくい方法である。それであれば、そうあわてて毎月毎月鉄のパラメーターを測定しなくっても、1/3Mフェリチンを測定しただけでいいのではないか。しかしながら、上限を低めに設定しているがゆえに、たとえば1/Mの鉄剤投与群に限っては、抜けがあって、測定期間の間にフェリチンが減ってしまう可能性も無きにしも非ず。そこで、しばらくは、鉄、TSAT、フェリチンを奇数月に測定して経過を見ることとした。
ちなみにJSDTのガイドラインでは、TSAT20未満、フェリチン100ng/ml以下で鉄欠乏と診断して、鉄剤の投与を検討するとなっている。しかしその上限値に於は明確な規定はない。かの水口先生は、鉄充足の指標としてのフェリチンの上限は250までと書かれていたが、きっと彼も心の中では100くらいまででうまいことやれればいいのにな、と、思っているはず。
自分たちも200までに上限を設定して、パラメーターを見ながら(心の声では100くらいだよなあと思いつつも)、鉄のコントロールをしてゆこうと思っている次第である。
ちなみに当院の2009年1月のフェリチン平均値は208.51で、平均Hb値は10.6、平均ネスプ使用量は22.01μg、平均エポジン使用量は1831.7Uであった。平均なので上限やら加減があるが、Hbを11程度に保ちながら、フェリチンの平均値が100近くまで落とせればいいと考えている。
・・・さて、こんな自分の考えをつらつらとblogに綴っても、興味ねえよおと言われる御仁が大部分なのは十分承知している。
ただし、これはぼけかけた自分の備忘録でもあるのでご容赦を。
その席で、提言したことがある。
透析医療は公費医療1兆円の枠の大部分を使うどころか、1兆円を超過して膨らみ続けている。
残念ながら透析人口は増え続けている。
それは高齢化社会と見事にリンクしているので、
当然、今後の視線は予防医学にシフトし、透析導入を、慢性腎臓病の部分で阻止することが重要になってくる。
てなわけで、医療経済としての透析医療が、拡大する可能性は皆無に等しい。
日本の透析をになっているのは、殆どがわれわれのような個人診療所である。
その施設で、数十人から100人程度(サテライトという形態を取り、数百人の患者さんを数箇所の診療所でプールしている団体も都会では多いのですが・・)の患者のメインテナンスをしている。一人のDrがそれをしているのだから、自分で言うのもなんだが、ビックリである。
ここまで大規模(一人の医師が診るという意味においては)になると、管理するためのツールが必要だ。
ぜひ、それを、透析商品を扱っている全国規模の会社で開発できないだろうか。
透析に必要な、コンセプトは、ほぼ決まっている。学会側もガイドラインを丁寧に作っているし、使うクスリも限られている。これをブラウザー形式で分析も可能なソフトに仕上げれば、各地の独自にやってた医者たちは飛びつくことだろう。例えそれが有償であっても。
そんな話をした。
もちろん、今も、そんなソフトは沢山存在する。ただどれも、必要十二分な条件を満たしていない。それはどうしてか、と、考えた。それはユーザビリティに欠いているからなのだ。
それと当然コストの問題である。莫迦高い金額で、更新性の少ないソフトで、導入の裾野も狭ければ、そこまで必要ないよと思われても仕方ないだろう。
環境を整備せんことには医者は帰ってこないだろうということは、何も医者の数だけの話ではないと思うのである。
これをご覧になっている、数少ない透析のベンダーさん、透析医療自体は拡大の可能性はないとネガティブなことを書きましたが、ITとして突出するもののない現在、この市場は開拓の余地があると思うのですが、いかがなもんでしょうか?キリンさん、ぜひ検討してくださいよ。いや、てのひらを返すようですが中外さんだっていいんです。断られたけどサイボウズさんでもいいんです。データを検査会社から引っ張ってくるくらいのプログラムはちょっとした知識があれば可能ですし、それを自動的に取り込んで、我々の欲しいちょっとした知識を統合していただいて、医療の側に引っ張ってこれる力が我々素人には必要なんです。