というわけでもうとっくに12時は回っているのだが、興奮している二人の男は、これまた異郷・天神に背中を向けるわけには行かない。
「もう一軒行こうか」と当然あいなる。
『玄海』は12時で終了だったのだが、ほかの屋台がいつまでやってるのか見当もつかない。
でも、人はにぎわっているし、わからない。
あいている屋台で、腰を下ろす。ここは若い夫婦らしい方がやられている。
とりあえず、ビールと、なんかを頼む(酔って記憶にない)。
そのうち、ちょっとかわいい女の子が隣にやってきて、ちょっとアーチスト系のやさしげなあんちゃんがその隣に座る。
席をつめてくださいということでいつの間にか二人と話してはじめている。
「おれたちホモなんですよ」といつもの如くジャブを入れたのを、
「ちがいますからね」と中村が必死で訂正している。
酔っているのでなぁにあいつはムキになってんのだという、いささか投げやりな感じ。
二人はご夫婦で、今日はなんと、池畑潤二カーニバルに来たのだった。
それも主体は彼女のほうで、目的はSIONで、なんと10年来のファンという。
えっ、またここでもSIONですか。なんかうれしくなり、その瞬間に想像上の尻尾を振っている。
「10年前って言ったら、彼女まだ10歳くらいですか」とみえみえのことを言う。
で、彼女は30歳。6歳と4歳のお子さんがいると判明。彼氏はデザイン会社勤務と判明。うーん、やっぱり、アーチストでありんしたか、それにしても奥様はとても子持ちには見えませんなあ。
私が行きたいって言ったら、いつの間にかチケットがあったんですよ、だって。
って言ってますけど、どうなんですか?
いやあ日頃何にもしてやれませんから罪滅ぼしです、と、彼氏ニコニコ。
「わかった、このひと、リリー・フランキーに似てるんだ!」と酔っ払いの自分が叫ぶ。
で、その瞬間、彼らはリリー・フランキーとSION命姉ちゃんになる。
その彼女が、広島のライブでSIONと一緒にとった待ち受け画面を見せてもらう。
SIONが肩寄せて、今よりもさらに若気なカッコした彼女と、液晶の中にいる。
SION、若いおねえちゃんだったらいいのかよ、と、実は心の奥底ではちょっとむっとしている。
「広島は信じられないくらい、会場がらすきだったんですぅ。だから撮影OKだったんだと思いますよぉ。今日も出待ちしてたんですけど、全然ガード堅いし、撮影禁止って言われて、とっても広島みたいな雰囲気じゃなかったんですよ。」
旦那ニコニコ。オレタチわけもなく興奮。ますます焼酎のピッチが上がる。
合コンみたいなので、私の罰ゲームかなんかでイッキしなくちゃいけないのをこの人が代わりに飲んでくれたんですよぉ。それが出会いですか。
なんかわからないけど彼の会社にいっちゃったんですよ、男ばっかりで女の子いないんで、みんなビックリして、彼が出て来てくれて。
いやぁ。なんかよぅわからんけどでれでれです。
で、街に貼ってあるポスターですっごく好きなのがあったんですよね、あとでわかったんですけど、それ彼がデザインしたポスターだったんですよぉ。
って言われたらもう開いた口がふさがりません。じゃないですか。彼氏、ニコニコ。
結婚はですね、私たちが決めたって言うより、私のお母さんが・・なにもう聞きたくない。そりゃそりゃ。
SIONの話を沢山したはずなのに、思い出してみると、彼らカップルの話ばかりがこうやって残っている。でも、それは素敵なことだ。
そのうち、新たな地元勢が6-7人参入して、遠方でのやり取りが始まる。なんか体育系のあんちゃんがオレに叫んでいる。知り合いですかああ。どこで知り合ったんですかあ。ここで。さっき。今日はじめてあった。そんな風にオレも叫び返す。この一ヒトはなあ、、広島のリリー・フランキーさんなんだよ。わかるか。じゃあ、おでん食べますか。そりゃNHKのオデン君かい。オヌシなかなかやるじゃないか。そのグループの若いおねえちゃんが笑いながらすみませんといってくれる。ああ、博多っておもしれぇ。屋台、最高。
気がつくと2時。
若い女将さんに聞くと、この屋台は先代の権利でやってるのだけれど、それもどうなるかわからない、ひやひやの毎日です、と。
これ終わったら屋台の駐車場っていうのがもっと北にあって、そこに屋台引っ張っていくんですよ。
ホテルに向かってふらふら歩いていると、『玄海』の老夫婦はまだ屋台をばらさずに片づけをしていた。
ということは屋台の解体って結構時間がかかるんだ。一度バラした屋台をまた組み立てて、暖簾をおろし、また夜がはじまる。
その繰り返し。僕らは通り過ぎて行くただの観光客。だけど。通り過ぎていきはするけど、この胸のうちにいっぱい残していってくれた。天神。
中村君といるとなんかいつも奇跡にも似た何かが起きるようなそんな気がしたんだ。
翌日、ホテルを出て、屋台のあった場所を過ぎる。チリひとつなかった。
ただの歩道。人々が過ぎてゆく。僕らも繁華街に向けて歩を進める。いささかけだるいステップで。
夢でも見たような気分。
そんな天神の夜。
Thanks.
http://blogs.yahoo.co.jp/tokimeki753/42045944.html/