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評価:
コメント:追悼・原田芳雄。
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藤田敏八・没後10周年(もうそんなになるのかぁ)ということで、
Wowowで特集を組まれている。
恥ずかしながらワタクシも彼の映画のファンでした。
彼のすべての映画たちを網羅しているわけでもないけど、
それでもえらそうに書くのだけど、
彼の70年台映画達と向かい合うのはいささかヘビーでもあるなと思う。
以前、自分の中に、唐突に秋吉久美子が舞い降りてきたとき、
『赤ちょうちん』とか『バージンブルース』とか『妹』にトライしようとしたがだめだった。
ヘビーでわびしいのである(実際には見てないので結論を出してはいけないのだが・・)。
今回、原田芳雄選手出演ということで、
『野良猫ロック・暴走集団'71』を観る。
これはさすがにリアルタイムではない。だって11歳だもんな。
新宿でヒッピー生活を送る原田芳雄さんたち(藤達也さんもいるぞ!)が、田舎に乗り込んで、
いわゆる『旧態然とした良識勢力』と戦い、滅びてゆく映画である。
だからといって、今観てて、勝手な理屈つけて気ままに生きるヒッピーたちに憧れるのかというと、そんなことは決してない。
空気が白茶けちゃって乾燥しているのだ。フリーセックスも楽しそうじゃないし、マリファナも楽しそうじゃない。万引きして、好きなこと言って、笑って、罵る。権力と正反対向いてること自体が存在価値だったのかもしれない、そんな時ってあるよね、とか、書くと、誰かに怒られそうだが・・。
物語はなぜか、急にドンパチになって急に輝き始め性急な収束に向かう。
芳雄さんはダイナマイトに火をつけて、敵役に突っ込んでゆき、撃たれ、
そのまま敵役に抱きついて、相手もろとも爆死を遂げる。
骨も身も残らない。
硝煙の匂いと焦げた肉の匂い。煙が晴れれば跡形もない。
その直前に、ヒロインなのかどうかよくわからないままで、梶芽衣子もあっけなく撃たれて死ぬ。
残った仲間たちも、ダイナマイト投げながら刹那に向かって走ってゆく。
おそらく全員が爆死し、そのあとは静寂が再び地方都市に訪れるのだろう。
そして変わることなど何一つないのだ。
廃墟で、(親が誰かわからないという設定のヒッピーたちの)子供がひとりで、ウサギと戯れている。
走る彼の横顔ストップモーションで終劇である。
子供が"生"の象徴などではないことは監督自身がよく知っているのだから、
これはアンビバレントなエンディングなのだろう。
ペシミスティックで、投げやりに明るい、パキさん(藤田監督)らしいエンディング。
劇中で実際演奏されるモップス(故・鈴木ヒロミツかっこいい!)の『ええじゃないか』がいい。
ええじゃないかええじゃないか、踊る阿呆に見る阿呆どうせあほなら踊って泣いて歌って生きておどらにゃそんそんそれそれそれそれえいやさぁどっこいさぁ、ええじゃないかええじゃないか、どんどん!
でも、どんなときも、原田芳雄はカッコいい。
彼は役を演じる人じゃなくって、役に自分を引き寄せる決して器用とはいえない類いの役者だが、そんな時代を背負ってる人もめっきり少なくなった。