ららら科學の子
矢作 俊彦
『ららら科学の子』やっと読み終える。
はるか遠くまで、戦後からわれわれは来てしまったんだなあ・・。
戦争?一体いつの?
もう60年も前、廃墟の土地から、復興し、天に牙を向く摩天楼。
不安定な空から血の雨が今日も降り注ぐ。
戦争はそして身近に感じられるのに目に見えなくなってしまった。
矢作俊彦。
この作家の顔を思い浮かべるだけでちょっとヘビーである。
男とゆうヤツを背負って立ってるように誰もが思うだろう氏の作品群たち。
『スズキさんの休息と遍歴―またはかくも誇らかなるドーシーボーの騎行』は何の疑いもなく、ドンキホーテの話だった。
今回の話は30年前から意地を張り通してきた、情けない男の話だ。
階級闘争。成田。安保。毛沢東。ベトナム。権力。
そのあたりの空気は、ハードに描写されている割にノスタルジーに包まれているのは、作者の誘導なのか。
確か、主人公を取り巻く3名の女が登場したと思う。
でも、この男はきっと、永遠に女を理解することなどないだろう。
バーコードのタトゥを持つ少女はうろこ雲の絵を描くだろう。
彼女もオトナになって、遠い目をして昔を語り始めるだろう。
たとえば小父さんの花火の話を。
たとえばプラネタリウムの話を。
そのとき男は、遠い大陸で、痛みを裡に抱え続けながら、裕次郎のセリフをまた呟くのかもしれない。
出来すぎじゃない、それが真実なんだ。
悟ってるんじゃない、ロボット法にがんじがらめになった鉄腕アトムの話じゃなくっても。
たしかに俺たちはみんなあの頃、科学の子だった。
『マイクハマーへ伝言』とか『リンゴォ・キッドの休日』とか、
『海から来たサムライ』とか『ブロードウェイの戦車』とか、
俺は何十年間も前に彼の著作に触れつつも、なにもわかっちゃいなかったのだと、
いまさらのように気づく。
・・・そして、blogでの『うらら科学の子』というネームはこの小説からとられたんだ。
なんかこんな感じで誕生日を迎えてまたひとつ年をとるんだろうな。
ハメット。チャンドラー。北方謙三。生島治郎 。大藪晴彦。
平井和正。夢枕獏。石田衣良。バロウズ。ロバート・ブロック。ジェイムズ・クラムリー 。ロバート・B・パーカー。谷口ジロー。関川夏生。ブコワスキー。
このうちオレから何人が去り、また何人が冷たい土の下に眠っているのか。
亡くなられた、漫画家の
石川賢さんも、上のグループに入るのかもしれないな。黙祷。