インディアン・ランナー
ショーン・ペン監督第1作『インディアン・ランナー』を観た。
この映画は
ブルース・スプリングスティーンの『ハイウェイ・パトロール・マン』(ネブラスカというアコースティックの中の1曲)をモチーフにして作られた作品だ。
だから舞台は1968年のアメリカだが、アメリカが昔を描いてもちっとも古くないのにはちょっと嫌気がさす。
日本だと
村上龍の『69』とかになっちまうもんな。
「バリ封(バリケード封鎖)たい!」とか妻夫木くんが颯爽と叫ぶのが日本の青春だったんだ(ホントはそんな明るさもなかったんだろうけど・・)。
農園を人に譲り、警官になった兄、と、トラブルばかり引きおこすベトナム帰りの弟、そして、彼らの家族の物語だ。
愛する人の出産から逃げ、酒場のオヤジを殴り殺し、弟は夜のハイウェイを迷走する。
通報を受け、追いかける兄。
彼はハイウェイが管轄を越えるところで弟を見送る。
闇の中に、リトルガンマンの格好をした愛すべき幼子だった弟の幻影が消えてゆく。
どうしてヒトは意味もなく凶暴になり、愛する人を簡単に破滅に追いやってゆけるのか。
そして、本当に生きることを素晴らしい、と誰もが言い切れるのか。
スプリングスティーンの描いたモノクロームの世界観が映像として再現されてゆく。
タイトルの『インディアン・ランナー』の意味は今ひとつわからなかったけど。
これは内容とはまったく関係ないのだけど、
ネットで調べていると繊細で凶暴な弟を演じていたのは、ヴィゴ・モーテンセンであると記載されていた。
それって誰?
その人は、今をときめく
『ロード・オブ・ザ・リング』でアラゴルンを演じている彼なのであった。
今となってはちょっと信じられません・・くらいイメージギャップあり。
村上春樹氏の新刊にもスプリングスティーンのことが書かれているようだけど、
ちらっと立ち読みした感じでは、さすが、といった文章だった。
スプリングスティーンの歌詞のイメージを無理矢理早送りすると、
ボードウォークの下 朝日が昇ってくるのを待ち続けたよね(2nd)
→それからオレはクルマを走らせて州境につくまで人を殺し続けた(Nebraska)となる。
こじつけのようだが、このギャップが、現実世界を冷徹に描きながらも戦い続けるBOSSのスタンスとなったのだと思う。
そしてネブラスカの世界は、僕の脳味噌の中に杭を打ちつづけている。