ファイヤーマンの夢を見たような気がする。
崩れかけたビルの中、酸素マスクと強力なゴーグルを被って彼は匍匐前進している。
生存者がいたら奥には進まず直ちにレスキューすること、
自分の命を最優先すること、
レシーバーからはそんな指令が飛び交っている。
このビルはもうすぐ跡形もなく崩れ落ちてしまうなんてその時誰が予想できたろうか。
そう思って、ああこれはNYのツインタワーなんだと了解する。
デジャブのように繰り返される虚構の映像。でもこれが現代のリアルなのかもしれない。
命?
痛いときは自分の命のことを考えるけど、血を流して助けを求める人たちの前で自分の命のことを考えたことはないな。
どうしてかって?
それはこれがオレの仕事で、オレが唯一胸を張って誇りにできることだからなのかな。
オレの日常はそんな劇的なもんじゃないよ。
酒飲んで気勢を上げて、ちょっと愚痴ってそんなもんさ。
でもそんな日常の中に悲劇は突然ぽっかりと巨大な穴を竅って現れるんだ。
その時には足下はもう崩れかけている。
落ちかけた人々を一生懸命俺たちは引っ張り上げようとする。
それがうまくゆこうがゆかまいが俺たちにできることはそれを続けることなんだ。
(とうきょうたわーからあるいてかえると、ほてるのまわりはしょうぼうしゃだらけでたいへんだった。)