必要にかられて、にわかに
男性更年期障害の勉強に追われる。
こうやってなかなか集中できずに、その日その日を追いかけながら、永遠に輪っかの中で走り続けるネズミの如くしゃかりきに走る。
前立腺癌の小線源治療・ホロミウムレーザーによるTUR・OAB(過活動性膀胱)・高齢者の排泄ケア・昨日も書いたSTD、
ちょうどこのあたりが泌尿器科としてはトレンディスポットであるが、
もちろん遺伝子治療とか、細胞間伝達物質とか、いろいろ尽きない話題もある。
しかし、そのあたりに関与することはもうできなくなっているので割愛。
開業医には開業医で道があるのである。
さて、男性更年期障害の概念である。
ご存じのように、男性更年期障害の概念というものも、なんか元気のない・性欲も弱った・やる気のでない、そんな中年以降の男性の中で、いろいろ調べてみるとテストステロン(男性ホルモン)が明らかに低下している人たちがいて、その人たちに男性ホルモンを補充すると、明らかに活気が出てきたり性機能も改善したり、ということがわかってきて、彼らのポテンシャル低下は男性ホルモンの不足によるものであるということが明らかになってきた、というものである。
診断に関しては、
1.問診(カナダのセントルイス大ADAM質問票を翻訳したものがよく用いられている。日本版が札幌医大のHPに載っている)
2.ホルモン検査
(遊離テストステロンが有用で、その低下があれば、次にはLH,FSH,PRL,PSAを測定する。
ちなみにPSAを測定するのは前立腺癌の可能性の高い人にホルモン補充は難しいため)
という手順でおこなわれる。
そこで、アメリカでのホルモン補充療法(TRT)の概要を述べよう。
(以下は、2004年5月のAUA(アメリカ泌尿器科学会)でのセッションからの情報を元に作成された)
ただし長期的な副作用などに関しては、まだデータがそろっていないし、今後のデータの蓄積を待つしかないのだが。
1.禁忌
絶対禁忌;男性乳癌患者、前立腺癌(これらの癌はホルモンに依存しているため悪化の恐れが大であるため)
相対禁忌;睡眠時無呼吸、血液凝固能亢進状態、前立腺肥大による排尿障害
2.治療形態
・筋肉注射(日本ではこれのみが可能で 通常100-200mgを1/2w注射 これの欠点としてはテストステロン及びその代謝産物であるDHTやestradiolの濃度を生理的に保つことが困難という点である)
・埋め込み型ペレット
・内服剤(日本で入手可能のものは肝機能障害が強く推奨されない)
・貼付剤
・ゲル
・ブッカル製剤(1日2回口腔粘膜に貼る)
3.副作用としての前立腺癌への影響
TRTが潜在している前立腺癌を顕在化させないかどうかについて、さまざまな検討が行われており、
Harvard大学のDr.Mogentalerの論文では、有意差はなかったとのことであった。
4.EDとの関係
バイアグラが無効患者でテストステロン低値の患者には、TRTが有効であるという報告がいくつかあり、治療の選択枝の一つと考えられる。
Columbia大学のDr.Shabsighのラットによる実験では、テストステロンは中枢系に作用する以外にも、海綿体平滑筋に直接作用があったと報告している。
日本でのパイオニアは
札幌医大なので、そこの男性更年期障害のページにリンクを貼っておくことにする。
(美容医学への扉)というのもあった。こちらには日本で使われていない薬も詳細に載っている。