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    don't shut out the light.

    • 2014.02.09 Sunday
    • 12:42


    誰かが、頭上から土をかけている。
    誰かではない、正確には複数形だ。
     
    彼らは、口数少なく、ただ、自分に課せられた任務を果たしているだけだ。
    そんなことは十分承知だ。
    でも、声は思念としてこぼれてくる。
    グスコーブリはよく笑ってたね。いやクラムボンはよく怒ったよ。あれは仕方なかったのさ。ひばりが泣いても火事はしょっちゅうだったからね。
    あれは事故だったのさ、しかたのないことさ、誰がやっても結果はおんなじだった。
    いや、誰がやっても結果はおんなじだったのかもしれないけど、それでもあいつが殺したも同然さ、だからその結果ヤネリがこの土の下にいるのも当然の報いなんだよ
    ヤネリは死んだよ寒い夜に。ヤネリは死んだよ星も凍る夜に。ヤネリはもう怒らない。ヤネリはもう笑わない。

    極寒の中でも、脈拍は上がり、呼気の二酸化炭素濃度は増える。
    労働者たちの肌から汗が吹き出し、筋肉には乳酸が蓄積する。
    この仕事を終えたらありつけるはず晩飯のことだけに皆の思念は集中し始める。
    もう、日は陰り始めている。早く、この墓埋め作業を終えねば。
    明日にはどうせ他の労働が待っているのだから。

    おれの上に雪のように土が積もってゆく。

    忘れようとしても忘れない記憶がおれを苛む。
    この手が赤く染まって、だがその記憶がおれを作っている。

    生まれた時は無垢だったのだと、泣き叫ぶ奴も居るが、冗談だろ、生まれた時からドロドロさ、そうおれは答えることにしている。
    この手が他人の血で赤く染まるか、自分の身体から流れだす血で染まるか、それだけの違いだ。
    判断が遅れれば死は瞬時におれをヒットしただろう。

    あのコンビニの角を曲がった角から飛び出してきた、暗視ゴーグルに浮かんだ少年兵の胴体めがけて引き金を引いた。
    下手に顔面やら胸なんて狙うもんじゃない。
    腹にヒットさえすれば、腐りながら死んでいってくれる。
    ためらえばこちらが撃たれるだけだ。
    少年の顔は凍りつく暇もなく、崩れていった。
    なにが正しいとか、なにが間違っているとか考えることなんてない。作戦の完全遂行を目指すだけだ。

    無論仲間たちも大勢死んでいった。
    この収容所におれ達がいるのは、もちろん偶然のなせる技だが、その偶然だって、もしかしたら必然のつみかさねが生み出したものなのかもしれないぜ。
    だからおれたち兵士は、その場その場で最高の判断を可能にするように、日夜トレーニングを重ねてきたんだ。
    まあ、「殺す」ことが商売で、その結果こうして捕虜として生きているおれたちに、もう「道理」も「大義」もありゃしないけどね。

    ここの環境は思ったよりも悪くない。
    でも、数日前も、ウイルス性腸炎で、17歳の狙撃兵が死んだよ。
    「ママ、頼むから明かりを消さないで。暗いんだ、真っ暗なんだ。寒いよ・・」彼はそう言いながら絶命した。

    拷問で死んだ奴らの、顔と股間にプラスチック爆弾を巻いて、爆破した。
    証拠隠滅。すべてが終わる。
    美人も子供も関係ない。涙や色気で挑発したって心はもう動くことはない。作戦を遂行するだけだ。
    そんなものに釣られるのはもっと上の地位にいるやつか、もしくは命を捨てたい奴らだけだ。
    おれたちは命令を遂行してより長く生きてまた次の作戦を待つだけだ。
    この戦争は誰が起こしたかなんてそんなことはどうでもいいことだ
    そして、おれたち兵士に、戦場以外で生きる場所が一体どこにあるっていうんだ?

    肌の粘膜と外界の間にいつもいかなる時でも一枚の薄い粘膜が張り付いているんだ。
    そいつがおれと彼らを隔絶する。
    休暇で家に帰って、妻を抱いている時も、子どもとポップコーンをつまんでビールをあおっている時も、その膜は剥がれることはない。
    だから、すぐにおれは癇癪を起こし、妻を殴り、子供の顔の輪郭がぼやけるまでテキーラをあおるんだ。

    燃え上がるわらの屋根、なにかわからない言葉でこちらを拝むスゲガサの老婆、はだしの子どもたち、薄い汚れた服で自らの美しさを偽装した妊婦。

    「ママ、ここは暗いけど、しかたがないよ。
    でも、せめておれの部屋の明かりは消さないでいてくれるとありがたいな
    せめておれの部屋の明かりだけは・・」

    【蛇足】
    怖い話だね。
    スプリングスティーンの「shut out the light」と、
    愛媛新聞2014/02/05の、1999年チェチェン侵攻での、独立派の拉致や処刑を実行したロシア特殊部隊「スペツナズ」帰還兵のインタビューから作った。
    そして「マルドゥック・スクランブル」のボイドという虚無を道連れにした男の幻影も重なっている。
    ホントに怖い話だ。
     

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