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  • 2014.04.04 Friday

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    愛媛県腎臓病患者連絡協議会40周年記念講演、春木繁一先生のお話を聴く。

    • 2013.11.19 Tuesday
    • 13:42
    haruki

     くどい文章になりますが、自分の備忘録も兼ねて。
    2013年11月10日(日曜日)午前中の講演会の記録です。

    愛腎会40周年記念講演を二日酔いで聴きに行きました。
    ベッドから這い出すように起きてクルマに乗り込んでなんとか時間前に到着。

    タイトルは、
    「41年の透析を、どういう工夫で、知恵で生きてきたか-精神科医として患者として-」
    だれも透析大好きという人はいません。私も「仕方なくやってきました」
    サイコネフロロジー・精神療法研究室 春木繁一先生というものでした。

    先生はタイトルのとおり、自ら透析者として生きてこられ、透析患者さんの心理学といった分野のパイオニアでもある。
    そして、座長は松山日赤、腎センター部長の原田先生、という、なんて豪華ラインナップなんだろう。
    (武智は、自分で病院をやる前には、日赤で2年足らずですが、原田門下で修行したのです。思い出すと辛かったけど、そのおかげで今日があると思っております)

    春木先生のっけから自分の透析条件をおしげなくされしてくれる(これはほんと会場にいる透析患者さんにとってはとってもためになるわ)!

    患者としては、

    ・除水は今は200ml/hrくらいで多くても500を超えないこと。
    ・1回の透析時間は6-6.5hr(週あたり18-19.5hrする)
    透析の時は15時開始で、最初の2時間くらいは寝ていて、それから衛星放送で時代劇見て(自分が現役の時は見れませんでしたから)、21時くらいからは現代のドラマを見て、そうしているうちに終わるんですと。
    エリスロポエチン製剤はまったく使っていないにもかかわらずHt48-50%(ガイドラインではHb表記だけど、Htでいうと推奨値は30-33%くらいで、先生のデータがいかにいいかがわかる)。
    ・塩分は5-8gを目標にする(無駄にナトリウムはとらない、朝昼は塩分少なめで夕方は4gでしっかり味付けするとか)
    (外食の弁当なんて無駄なものはご法度、自分で調理する)
    (トーストにバターはつけない、つけるならジャムでカロリーを補う)
    (目玉焼きは塩を付けないで食べれるようにする、野菜はドレッシングかけず、野菜のナマの味を味わえるように修行する)
    (焼き魚もコショウと少量の塩で食べる)
    食事についてはとにかく自分で訓練していって、時に羽目をはずすといった感じで。
    ・リンに関しては吸着剤を食事量で調整しており、リンが良ければカルシウムもいいようで、副甲状腺ホルモンの値もよく、今はアルファロール0.25-5くらいの内服だけです。
    (透析を何十年もしていて、副甲状腺の過形成にもならずに、骨もまずまずという人は、先生と同年代に始められたヒトがいたとしたら、まずはみつからないのではないか)
    ・運動すると汗が出るこれが尿の代わりです。今は足が弱って運動なかなか出来ませんが、50代はいろんなチームの会長もしてました。

    とにかく、十分は透析をすることがね、大事なんですよ、だから私の外見見たら、透析してるようには見えないでしょ、と、笑われる。

    精神科医としては、

    ・則をこえず(欲張り過ぎない)
    ・ハンドルの遊び(透析の前にはたまには羽目をはずしてラーメンを食べるとか)
    ・人生を楽しむ(エンジョイ)
    ・闘病にならないように
    ・あきらめる=明らかにする(なる)(どこかでは自分が透析患者であることを認識する)
    ・ユーモア、笑い、ミーハーになる
    ・おおらかさ

    一番大事なのは、家族とかスタッフとか、いろんな人に愛されたという体験であると。

    (これは透析にかぎらず、ヒトがヒトとして認めてもらうのはやっぱり「愛」なんだよなーと武智もこの歳になってやっとわかるたぐいのものだ。
    「バカヤロー」とか、若い時はいきがって、誰の助けもいらねえよとか思ってたけど、自分も愛されて育ってきたんだと思うよ、ホント。
    両親とか、学校の先生とか感謝ですよね、遅すぎますけどね。
    だから遅すぎるかもしれないけど、汝の隣人を慈しむことが大事なんですけどね。)

    長期に生きていくための心がけ

    ・感謝
    ・柔軟さと頑固さ(塩分の取り方とか、自分は絶対6時間透析を譲らないとか、決めたことは順守するという頑固さ)
    ・不安は不安
    ・希望を持つこと

    最後に西条八十さんの「かなりや」の歌を例えに出されて、

    患者さんに寄り添って、話を聞いてあげて、患者さんの方から心を開いてくれるのを待つんですよ。
    ダメダメと怒るのでは駄目です。
    歌を忘れたカナリアは ぞうげの船に銀のかい 月夜の海に浮かべれば 忘れた歌を思い出す・・ってことなんだそうです。
    患者さんが自ら歌を歌い出してくれるのを待つんです。

    これは、ほんと医療者として耳が痛い話でした。
    おいお前、透析医としての初心を忘れてるんじゃないかと、神様が春木先生を使って、自分に言ってくれたんじゃないかとさえ思いましたよ。
    リセットされるわけではないけれど、自分は透析医療の現場にいられるというラッキーももらってるんだし
    心入れ替えてますますがんばらんとイカンなあ(ま、それがなかなかムヅカシイし、自分から言わすと待てども待てども便りのない患者さんも決して少なくないわけで・・)と思った次第です。

    以上。

    文化の日の振替の本日、たまった仕事を片付けてます。

    • 2013.11.04 Monday
    • 10:41
    2.75Ca

     「高Ca値に対しての透析液変更」という発表が、扶桑薬品の冊子に掲載された。
    うちの技師のMくん(実名前載ってるし・・)といっしょに作り上げた発表だ。

    扶桑薬品だけが、まあCa2.75mEqの透析液を発売しており、それの使用に関する発表をまとめただけといえばそれまでなんだけど、
    冊子には、口演11題、ポスター17題が掲載されている。

    塩酸セベラマーが上梓されて、ビタミンDの生体に対する有用性が説かれ、こんごCa/P/iPTHに対して総合的にどういったアプローチサガなされるべきなのかは、まだまだ議論の尽きないところだろうけど、
    古い医者の自分からすると、炭酸カルシウムや、アルミゲルしかなかった時代からしたら、使える薬剤は星の数ほどあるのはある種の僥倖ではある(みんなべらぼうに薬価が高いですけどね)。

    最終的にはP(リン)のコントロールが最優先されるべきなんだろうけど、これは永遠の課題で難しく、
    服薬コンプライアンスの悪い患者さんはあいかわらず悪いままだ。
    技師が内服の重要性を説いて回り、管理栄養士の方がベッドサイドで懇切丁寧に説明して、検査データの解説をして、それでも相変わらずな人はある程度自己責任だと思うようにもしているが、これも正しいのかどうかはわからない。

    透析はなりたくなってなった疾患ではないのは当然だけど、予後に関してはある程度自己責任の要因も多いと思う。
    またヒンシュクかうかもしれないけど、自分の疾患のコントロールはやっぱり自分で考えてみることも随分重要になってると思うのです。

    「わしは先生に全部任せとるから」と言ってくださると嬉しい気もするけど、
    その言葉の裏で、己の頭で考えることや、積極的に治療に取り組むことを放棄する方向に向かったりすると、それはそれで困るし。

    ガイドラインなるものができて、それはそれでエビデンスがベースにあって、全国の高名な先生たちが練りに練って作り上げたものであるからして、当然素晴らしいものであるのだけれど、
    やっぱり患者さんを見る時は「個」として接することでありますからねー。

    施設の水準やら内容を表すためにはmassとしてみていかんといかんのですけど、
    学会での発表とか延々と聞いてると薄ら寒くなるのは、発表のための発表も多いせいなのか、自分がこういった分野に向いていないのか、どっちもどっちなんだろうな。
    でも、自院のデータを分析することは、こうやって100人弱の患者さんを診させてもらっている透析施設としては避けて通ることのできない道ではあるんだけど。
    たとえそれが凡庸な結果に終わったとしても・・。(ああ自己弁護してるよ)

    またなにが言いたいかわからなくなってますけど、まあ毎度のごとくイライラしながら、前を向いて進もうという努力だけはしてるってことなんですけどね

    おれは時々この職業に向いてないんじゃないかって、この歳になっても思うんですけど、みなさんどうなんですかね。
    みんないっしょののかな?

    これから淋しい秋です
    時折手紙を書きます
    涙で文字が にじんでいたなら わかって下さい
    涙で文字が にじんでいたなら わかって下さい


    って、なんだかわからず、マイナーコードでうめつくされた因幡晃の歌を口ずさんでみたいような秋ですね。

    日本透析学会から帰ってきて、心の中には風がまた吹いているのだよ。

    • 2013.06.26 Wednesday
    • 13:22

     風の歌に「ByeBye」というのがあった。

    ヒトはだれでも皆愛し愛されるんだけど、いつの日か終わりっていうものを知るんだ(知らなければならない)、というような歌だ(そんなふうに自分が勝手に解釈!)。
    もちろん終わりは、喪失(死という惜別)であることもあるし、別れだったりもするし、また次のステージに行くために袂を分かつことだったりもする。
    まあ痴話喧嘩もあるわな。
    ある場所で、ある時に、「ByeBye」しなけりゃいけないことってずいぶんあるんだよな、
    学会のシンポジウムを聞きながらなぜかそんなふうに思った。

    日常からちょっとだけ、時間と空間を変えたことは、まんざら悪いことでもなかったらしい。
    時には、そう、ちゃんとバイバイって言ってあげる事も必要だ。
    それがつらいことだったり、自分にとってデメリットがあるときでも、必要なときには必要だ。
    むろん逆にバイバイを言われて何度もしたやるせない思いは、これからもし続けるんだろうけど・・。

    そう、「ByeBye」はいつもあるのだ。

    そんなわけで、学会最終日の日曜日も、結構長時間勉強した。
    ケツは痛くなったり、途中で寝たりもしたんだけど。
    思ったのは、
    ヒトっていう存在は、何かにinspireされ続けなきゃやっぱり生きていけんのかもしらんなというようなことであった。
    透析という医療の中で、患者さんの「より長きより良き透析ライフ」を全うさせるために医療者の方だってみんな七転八倒している。
    そのやり方にゴールデンスタンダードというものはない。
    だからみんな自分の信念とエビデンスの間で揺れ動きながらもより、良き道を模索して、し続けるのだろう。
    それらを拝聴するのは実に興味深かった。こんなやり方あるんだ、へえそうしてられるんや、とかね。
    だけどなんというのかな、みんなそれを「楽しんで」いるんだと思う。
    (語弊を招くかもしれないけど、苦労しながらもみなさんそれを「生きがい」いや「自分の人生?」とされているのだと思う)
    「目の前の患者さんを助ける」ことも医学だ。
    だけど、こういった慢性疾患とか、例えば治らない担癌患者さんをみた時、医療にできることは「勝利」を目指すことだけではない。
    「正解」などどこにもないのだから。
    それにしても、みなさん、医療経済のことを抜きにしては語れなくなっており、ホント医者にとっても患者にとっても結構ハードな時代だと思う。

    さて、ここは具体的な医学知識の場を披露するところでもないのでこのへんで。

    博多のもつ鍋と焼き鳥と鶏皮餃子と、ラーメンは学会場だけだったけれど、十分堪能しました。

    最後にこの似顔絵を。

    第14回「愛媛腎不全懇話会」

    • 2013.06.07 Friday
    • 19:10
     昨日は第14回「愛媛腎不全懇話会」だった。
    講師は近江八幡市立総合医療センター 腎臓センター顧問の八田告先生で、「実践的CKD医療連携の推進」というものだった。
    先生は、人口30万人の年で、たった一人の腎臓専門医として、教育入院により腎不全の進行を遅らせるという試みを推進されてきており、その具体的な話が、実例とともに紹介された。
    自分は泌尿器科なので、そんなに腎不全の初期を診ているわけではなく、Cr3-4からくらいの介入が多いのだけど、それでも、いろいろ、気付かされる点の多い講演会だった。

    懇親会の場で、先生が言われていた。
    「健康寿命と寿命の間に10歳の開きがあるんですよ・・」
    確かに。
    そのつぶやきから、どうにかしたいという先生の決意がひしひしと感じられた。

    健康でいないと生きている価値はない・・とまでは言わないけれど、
    余生に突入してから病気になったんじゃ生きる価値は半減だろう。
    元気で長生きしてゆけるような社会を作るためには、
    がんの治療とかもそうだけど、生活習慣病の予防や、ワクチン医療は必要だろう。
    だから、政府や学会の指針は間違ってはいないと思う。
    疾患にかかってから要する費用と、予防によって健康で生きていける歳月が延長することとを天秤ばかりにかけて考えると、
    元気な若い人にとってはそんなことをリアルには想像することはむつかしいのかもしれないが、
    やっぱり元気でいる若い時から、いろいろ考えたほうがいいとは思う。
    ヒトの寿命はもはや織田信長の50年ではなくなってしまったんだから。

    ・・こんなこと考えるのは自分も老いを意識するようになったってことなのかな?
    あれっ、「Don't trust over 30」とかいう言葉もあったよな・・大人なんて信じられるかよってほざいてた小僧もすっかりおっさんになったので、
    忘れてしまいましたよ、都合よく、と平気で言ってみたりするのである。
    大人の経験値を尊びなさいよ、お前らより、おれのほうがあよっぽど楽しく生き倒してやってるぜ!

    でも人生80年とするとまだ30年弱もあるんだもんなあ。

    一寸先が闇であることには違いないけど、まあ、自分の「身体」っていうのは「精神」をも規定する因子なので、おろそかにはできんよねー。

     Take Home Message

    ・腎不全を診るときにCr中毒になるな(Crが上がらなければ全ていいというものでもない)
    ・尿蛋白<0.3にするように治療しましょう(これが腎不全の進行を抑制する)
    ・腎不全の教育入院は腎不全の進行を抑制得る!(そのために紹介先にはいつも治療実績を公開しているとのこと)
    ・減塩モニタ(朝一の尿で前日の摂取塩分量が出るというすぐれものamazonで18200円)

    「先生、高いんじゃ・・」
    「いや、安すぎでしょ」で会話は終わりましたが、確かに塩分過剰の人にとっては消耗品も要らないし安い買い物かも!
    先生の外来では、血圧・体重・塩分の自己記録を患者さんが持参するので、所要時間5分とのこと(腎不全外来がですよ!)。

    写真は全然関係なく、その後で食った「ぞーな」の旨すぎる舌平目とすり身魚のパン粉焼き!

    2011年末の我が国の慢性透析療法の現況 (「腎臓」2012 Vol.35 No.2(日本腎臓財団))

    • 2013.03.05 Tuesday
    • 17:11
     2011年末の我が国の透析人口は304,592人(+6,604)。
    ここ数年、増加速度は鈍っており、2017-21年に約33-35万人で最大値となり、その後減少に転ずると言われている。

    ここ5年くらいの年間導入数は38,000人とほぼ変化なし。
    2011年1年間に死亡した患者は30,831人でありはじめて3万人を超えた。そして年間死亡数はこの20年間一貫して増加し続けている。
    透析人口における年間粗死亡率はずっとの9.5%から、10.2%とはじめて10%を超えた。

    導入疾患における腎硬化症は(11.7%)ゆるやかに増加している。
    ちなみに糖尿病性腎症44.2%、慢性糸球体腎炎20.4%だ。

    透析形態では昼間透析が83.3%。
    在宅透析は2001年の103人から、2011年327人と3倍以上の増加。
    それに対し腹膜透析は10年で1割の増加。
    夜間透析は2001年18.6%から2011年13.4%と減少。
    HDFは患者調査においてのみの調査だが、全体に占める割合は5-6%程度。

    我が国の過去11年間(1998-2008)では、
    透析回数は96%が週3回、
    1回4時間以上が78%、
    血流200ml/min以上が66%、
    透析液流量は82%が500-600mL/min、
    ダイアライザー膜面積は29%が1.4-1.6m2であり、52%がPS膜である。
    透析条件の中で最も予後と関連するのは透析時間であり、210分未満では、血流小・透析液流量・ダイアライザなどを調整してKt/Vを増加させても予後は改善しない。

    ここからは個人的な意見。

    透析診療所をたちあげて14年間やってきた。今、当院で透析されている患者さんは93-4名といったところだ。
    やはり、CKDの進行を阻止する、新しい検診システム(高血圧、高脂血症、高尿酸血症、尿蛋白、eGFRなどでひっかけてくれる)は今後ある程度有効かと思う。
    しかし、ベースの糖尿病患者の腎症への進展を抑制することが最も重要だろう。
    そしてその役割を担って下さるのはやはり一般内科医の先生なんだと思う。
    この高齢化社会で、導入しても死亡するヒトの割合はどんどん増えてゆく。
    合併症の多い方の割合も。(目も当てられないくらいホントは多いのです。)
    PADとか、脳梗塞とか、心筋梗塞だ。
    でもインターベンションとか早期投薬で、死までは至る例は減ってきている。これは少なくとも医療の勝利だろう。
    でも、死ななければそれでいいというものでもない、透析しながらQOLを維持していきてゆくためにどうしたらいいのか、考えるのはやはり個々の患者さんだろう。
    そんな状況の中で、家庭透析や、夜間透析が、ある一定以上のニーズを占めることはあるのだろうか。

    在宅透析を推進されている酒井瑠美先生は、「ひとりやってみればどうにかなるもんよ」とおっしゃられた。
    いやあ彼女はチャレンジャーすぎる。

    おれは、そういう意味では、患者さん一人ひとりとガチンコ勝負するくらいには向かい合ってないのかもしれない。
    でも、自分たちは、できうる限りの資源と知力と人力の中で、最も良質な透析医療を提供しているつもりだ。

    朝日新聞に谷川俊太郎さんの詩が載っている。
    「今月の詩」の最後を飾る詩だ。

    そのあと

    そのあとがある
    大切なひとを失ったあと
    もうあとはないと思ったあと
    すべて終わったと知ったあとにも
    終わらないそのあとがある

    そのあとは一筋に
    霧の中へ消えている
    そのあとは限りなく
    青くひろがっている

    そのあとがある
    世界に そして
    ひとりひとりの心に

    ありきたりの言葉かもしれないけど、「透析」はけっして終わりなのではないと思う。
    そのあとが必ずあり、ヒトが滅して灰になるまで、この「人生」という道程は続いてゆくのだから。
    そして死んだのちも、きっとどこかに青い空は広がっており、魂は自由に駆け巡ることが可能なのだろう。
    「魂」が実際にあろうがなかろうが、そんなふうに考えて、時には落胆しながらも、時には励まされながらも、
    絶望や自暴自棄だけには取り込まれないように、
    自分だけではなく、
    医療を施す側も施される側も、すべての生きとし生けるものは、みな生きるべきなのだと思う。

    僕は僕の居場所にただ佇んでいる。

    • 2013.01.12 Saturday
    • 14:33
     タクシーの後部ドアが開く。

    助手席で、死んだはずのヒトが、はやくはやくと手招きしている。

    「えっ、いいんですか」
    「どーぞどーぞ、お乗りになってくださいよ」
    「じゃあ言葉に甘えて・・失礼します」

    音もなくドアが締まり、タクシーは走りだす。

    「あのぅ、こないだ確か亡くなられたんじゃ・・・」

    わかっていたけど喉元まで飲み込んだ言葉を早々に切り出してみる
    こういうことは早いうちに言っとかんとね。

    「そうそう、そんなこともございましたけどね、今も結構こうやって気ままにさせてもらってますのよ
    皆様のお陰で足も切断せずにすみましたし
    もうそれに死んでしまいましたんで治療も必要ありませんしねー」

    逝きしのち伝う涙にくらぶれば昔はものを思わざりけり

    死んでから泣いても遅いよねえあんたが生きてる時はそんなこと思わんかったくせにねー)

    「なんかね、今作ったんですけど、
    あなたのいない情景っていうのは、なんか風景を切りとるっていうか、いっつも自分の中では短歌なんですよね。
    まあおれは、死んでからでは遅いので、生きているうちに旨いもの食って飲みますけど」
    「あらまあ、まあまあ、どうしましょ、でもね、若い人はそれでよろしいんじゃございませんの、
    いえね、こっちもこっちで、高島屋とかゴディバとかちゃんとございましたのよ、おほほほほ・・」
    「はぁ」

    タクシーが止まる。

    「あら、もう日赤についてございますですよぉ またお会いしましょう」

    タクシーの運ちゃんが振り返ってニヤリと笑う。

    「せんせぇ〜」

    その顔もかつて見知った人だ。

    お辞儀をして車を降りる。振り返るともうタクシーはどこにもいない。

    傍らに救急車が滑りこんできて、うわんと耳に圧がかかり、僕は僕の居場所にただ佇んでいる。
    この世に突然放り出された赤子のような面持ちで。

    でもそこが僕の場所なんだ。

    院内新聞『ほおづき』原稿2013.1月号(透析患者さんに配ってます)

    • 2013.01.11 Friday
    • 18:37
     新年気分もだいぶ落ち着いてきた頃だとは思いますが、とりあえずおめでとうございます。

    今年は元旦に、混んでないところということで、地元の「玉生神社」に出かけました。
    おみくじは「小吉」で、いろいろ書いてありましたが、全て忘れてしまいました。
    まあ、悪いことがなるべくおきずに、朝ちゃんと起きれて、夜も眠れて、ストレスがなければ、日々是好日ということでいいんじゃないかなと。

    ・・で、その日も昼からにごり酒飲んで撃沈でした。

    年末には「西行法師」の小説(夢枕獏「宿神」4冊組)を読み終えました。
    今も激動の時代かもしれませんが、平安末期の王朝から武士の時代へシフトする時期も、混乱と陰謀と権謀術数の時代で、幾多のドラマがありました。
    その時代を生きた「平清盛」のNHK大河ドラマも視聴率は最低でしたけど素晴らしかったですし、23歳で出家したあとも、時代とともに生き抜いた「西行法師」も素晴らしいものでした。

    願わくは花のもとにて春死なむ その如月の望月の頃

    これも有名な歌ですね。・・今しばらくは、西行法師の世界に寄り添う予定です。

    透析に話を戻しましょう。

    今年は元旦が火曜日で、それにともなって曜日のシフトもあったりで、なんかいつが週末なのかわからない感じで、みなさん総じて体重増加が多かったようです。
    しかしもう七草粥も済んで、平常パターンに戻りましたので、気を引き締めてまた頑張って行きましょう。

    昔の人の言葉もそう捨てたものではなく、一年の計は元旦にあり、というのも案外そのとおりかもしれません。
    確かにスタートで気を抜くと、修正がだんだん難しくなってきますからね。

    長時間透析、高血流透析、透析液の清浄化、新しいリン吸着剤とかCKD-MBDのガイドライン、オンラインHDF、ネスプによる貧血治療、シャントPTA。

    最近の透析事情をめぐる、いろんなキーワードはあります。

    しかし、いつもながら思うことは、
    患者さん皆さんそれぞれが自分のフィールドで頑張ることがなければ、それは一方通行の医療であるということです。

    リンの制限、しっかり透析で小分子物質(中分子も?)抜いてその上でしっかり食べる、水分・塩分は控えめに、血圧の管理・・などなど。

    耳に痛く刺さってくる患者さんもおられるかと思いますが、
    ひとまかせではなく、自分にできる基本的なことは自分でできるうちはやって、またこの一年を元気で乗り切ってゆきましょう。

    【追加】

    この原稿、
    いつも年始には「お願いします」と言われてからバタバタと書くのですが、
    「毎年毎年初心に帰りましょうね」みたいなことを書いていると、なんだか疲れてくるのも事実です。

    基本的なことはね、いくら透析という医療工学が進歩してもおんなじことなんです。
    ボクラはこうやって医療者として患者さんに寄り添って生きておりますが、患者さんとは決して同じ立場にはなれない、そんなこともわかりきったことなんです。
    だけど、自分たちも、悪くなっていく患者さん見てると凹みますし、他人事と思えない時だってあるんです。
    だから和気あいあいとやってるようでも引き締めるとこは引き締めなくっちゃいけない。
    難しいですよね、年中顔合わせてるようなもんだしね。

    去年から今年にかけても、決して少なくない数の透析患者さんが亡くなられました。
    仕方ないといえば仕方ない面だってあります。
    でもそのたびに自分たちの骨肉をもそぎ取られるような感じがします。
    その人の人生がalrightだったのかどうか、そんなエラそうなことだって脳裏をよぎったりするのも事実です。
    そんなこと誰にもわからないのにね。てめえのことだってわからないくせにね。

    でもね、「よりよい死」はね、「よりよい生」の中にしかないっていう思いは、年々自分の中では強まってます。
    そりゃね、来世をすがって念仏唱えるのも悪くはないですよ。
    でもね、来世で救われるのなら、そんな神や仏は自分には必要ありません。
    だから、この世で生きることがまったきことなんだという感じの「西行法師」の生き方には、なんかヒントがあるんじゃないかと思ったりもするのです。

    いや、まだ勉強不足なんで、違った解釈なのかもしれませんが、、
    「天国なんてない ただ空があるだけ」って、ジョン・レノンが『イマジン』の中で歌うようなそういうことなんかなぁ、
    西行さんの言ったことは、とさえ思います。

    そうそう、これもね。

    『平清盛』で、
    中井貴一演じる平忠盛(清盛の父)が言ったセリフですけど、
    「軸足がぶれていなければ、放っていても然るべき所にたどり着ける。」
    まったくそのとおりなんですよね。

    時々、中井貴一さんにも夢のなかにでも出てきていただいてですね、
    姿勢を正してもらって、
    なんとかこの一年を乗り切っていきたいですね。

    今日もおつかれさまでした。

    書き初めシリーズを・・


    エポエチンα特定使用成績調査-中間集計結果-

    • 2012.11.22 Thursday
    • 13:20
     エポエチンαの特定使用成績調査(中間)(キッセイ薬品)が机の上に置かれている。
    エポエチンはエポジンのバイオシミラー製品だ。
    週3回投与の製剤の中でのシェアはどうも伸びているらしい。薬価安いし、丸めだし。

    まあそれはされおき、
    解析対象は252例。観察期間は28w。
    投与前の平均Hb9.55、投与28wでは10.38。
    いい感じに保てている。副作用発現率は4.4%。先発品と遜色ないということなんだろう。
    これをキープするための投与量は5052IU/wとなっており、やはり普通に考えると1500*3/wくらいの投与は必要ということになる。

    日本透析学会の集計で、透析患者のHb>10保つための平均エポジン量が4500U程度という結果になり、
    それ相応分の管理料がアップして、その代わりにと言ってはなんだが、ESA製剤は病院の持ち出しとなったと聞いている。
    それも結構前のことだ。
    これからは他の分野でもこういった包括体制が敷かれていくんだろう。

    医療経済は厳しくなるのだが、医療はほおっておいてもどんどん発展してゆき、患者管理のレべルだってどんどん上がってゆく。
    昔だったらHb10もあったら御の字だったが、今ではもはや目標Hb11の時代だ。

    ただし、ESA投与する際の必須である造血に必要な鉄だって、酸化ストレスを生むのでなるべく投与は控えたい。
    ESA製剤が包括化された時、鉄剤の投与量が跳ね上がったとも聞く。
    鉄を増やせばそりゃ造血は進む、ただし血中のフェリチン値もそれなりに跳ね上がる。良し悪しだ。
    そのあたりの最終エビデンスはまだ得られてはいない・・。
    そんな感じで、うちではフェリチン100という低めの値を目標値としているのだが・・。

    それにしても、異様に低容量のESA製剤(このエポエチンとかネスプとかセラ)でHb>10をキープされている先生方はどんな手法を使っているんだろうとか思う。
    最近の当院の平均は、患者さん全体のHb10.83、Nesp平均使用量20.85μg/w、エポエチン1339.3IU/w(エポエチンの人は1/w投与とかがほとんどなので少なくなる)、
    ミルセラは使用患者数が少ないので割愛。

    今後、経済状況はますます切迫するに決まっているので、病気にしないことの重要性はどんどん増し、予防医療や、ワクチン医療はどんどん進むべきだろう。
    それはウエルカムなことだ。
    みんなが血圧のことや塩分のことやメタボのことや糖尿病のことを心配しながら生きる世界は決して辛く哀しいことばかりではないと思う。

    自分もちっぽけな医療の中の泌尿器科の中のまた透析というフィールドでもいろいろ切磋琢磨している。
    だから透析医療の是非を論ずる場ではないことを了承いただきたい。
    そのちっぽけな中においていろいろ努力してるつもりなんですけどね。
    まあ努力はしてもし足りぬものなのでさらなる努力をするだけですが。

    『私の透析考-元気で長生きできる透析-』 坂井瑠美先生が、熱く在宅透析を語られた雨の午後!

    • 2012.11.12 Monday
    • 18:18
     愛媛県の透析患者さんの会である愛腎会の第40回定期総会が、小雨降る中、福祉センターであった。

    今回、自分は、午後の特別講演だけ聴きに行かせていただくことにした。
    神戸の坂井瑠美クリニック(といっても本院と分院とある大病院なんですが)坂井瑠美先生の、
    『私の透析考-元気で長生きできる透析-』というものだ。

    坂井先生は透析の黎明期から40年以上も携わってこられた先生で
    「わたしは後期高齢者の手前なので、自分より年下の人間が年取ったなんていうことは許しません」と、自分で笑いながらおっしゃられていた。
    それなのに、この透析に対する情熱とお元気さ!
    自分はまだまだぺぇぺぇの小僧だと思い知らされる。

    sakairumi

    先生は、適正な透析は週3時間4回でいいの?それって最低条件じゃないの?誰がそんな事決めたの?じゃあどうすればいいの?
    ・・という問いに対する答えを10年前から具体的に模索し始め、
    長時間透析にたどり着いた。

    以下は先生の施設での具体的な透析方法の変遷。

    ・当然一回の時間延長(全員5時間以上をまず、と、言われていた)
    ・また回数の増加のために隔日透析(週4回で月水金日火木土の2wが1サイクル)(透析量の指標は、Kt/Vだけでなく、透析回数*2に依存するので回数を増やすことは非常に有効)
    ・しかし日中に7時間も8時間も使うのは非合理的→明日の活力に備える睡眠中に緩徐な透析をすれば患者さんも楽だし時間も有効に使える→施設でのオーバーナイト透析
    ・それならいっそ在宅で一回の時間も伸ばしてやっちゃえ→在宅透析(HHDという、夜にやってる人も多いとのこと)

    に取り組んできて、着実に形にされているのだった。

    こういった会に積極的にこられている方だけが、病識が高いかというと、決してそんなことでもないとは思っている。
    みんな、『末期腎不全』というものを背負いつつ日常をなんとか生きている。
    しかしそれの否定的なファクターとだけ捉えて、目を背けているのはなんか損な気もする。
    そりゃあ学んだから病気が治るとかいうものでもないのだけれど・・。

    自分たち健常人が無意識に享受している『(健康な)生』というものを、否が応でも意識させられてしているのが『病気』とともにある人達だ。
    その中でもより、日常生活に組み込まれやすい透析者にとっては、一日一日がそれを反復せねばならない瞬間の連続だろう。
    それはなんとハードなことだろう。
    だけど、ヒトは死が訪れるまで生きてゆかなければならないのは、みな同じだ。

    自分の人生を自分で模索するときに、
    坂井先生の言葉は、素晴らしい重みを持って響いてくるだろう、
    そう思いながら話を聴いていた。

    坂井先生、ホントにわざわざありがとうございました。
    この愛媛の地で、在宅透析がどうなってゆくのか、自分の口からはなんともいえませんが、自分も前向きで色々考えたいと思います。

    【補足】

    *ちなみに、先生たちの作られた『長時間透析研究会』では、
    長時間透析を、
     週3回・1回6時間以上の透析
     隔日透析・1回5時間 と定義しているとのこと。(日本のスタンダードとして根強いのが週3回・1回4時間)

    *透析医会の『在宅血液透析管理マニュアル』(H22.2.26)=「HHDは自己責任、セルフケア」

    *通院は1/M、Cr前値が8以下、多くの方たちはほぼ毎日5時間以上するので、リンとか下がりすぎることも多々あるとか・・
    *カナダでは国策としてHHDが進んでいる、妊婦さんも3000g以上のbaby出産可能とのこと。

    *坂井瑠美クリニックの「在宅血液透析」のところに詳細が載っていました。

    透析液Ca3.0→2.75の論文を読む。

    • 2012.10.08 Monday
    • 11:50
    iPTH

     当院でも、2012年1月から、透析液Ca濃度を、3.0mEqから2.75mEqに変更した。

    その結果、iPTHの値は有意に上昇した。
    中央値131.75pg/mlから142.05pg/ml(p>0.05).
    その概要について学会で報告した。

    しかしiPTHの変化はいわば許容範囲内であり(ガイドラインではiPTH80-240とされている)、
    高Ca群の人は正常範囲まで下げることができたので、
    今まで高Caのため躊躇されていたVitDの治療を、より積極的に行うことができるだろう、という結論にした。
    ちなみに当院での対象患者は72名で、観察期間は3ヶ月である。

    今回、名古屋日赤での同様の研究が、「日本透析医学界会誌」に掲載されていた(2012年9月号;pp873-880)。
    「透析液カルシウム濃度3.0mEq/Lから2.75mEq/Lへの変更は血清PTH濃度に影響しない」というものだ。

    こちらは観察期間6Mで、やはり維持血液透析を継続した患者99例中、入院を要した症例やVDRA・シナカルセト塩酸塩・Ca含有P吸着剤の処方変更を行った症例を除く63例を対象としている。
    透析液Ca濃度を3.0mEq/Lから2.75mEq/Lへ切り替えることにより、血清補正Ca濃度は変更後2週から有意に低下したが、血清P濃度・iPTH濃度・iPTHの変化率ならびにALPには有意な変化を認めなかった、と結論されている。

    この論文では、iCaも測定されており、
    ベースラインの血清iCa濃度が1.20mmol/L前後が血清Caに影響を与える分岐点かもしれない、
    (実際は血清Ca上昇が30例、下降が30例ずつであった)と、考察には述べられている。

    いずれにしても、ランタンやセベラマー等のCa非含有P吸着剤が出て、さらにシナカルセトのようなCa・P・iPTHのいずれをも下げるような薬剤も登場した昨今、
    このCaバランスのいい2.75meq透析液も、CKD/MBD治療の新しいベースとなるものだと思っている。

    透析液Ca2.75mEqに変更して1ヶ月 その(2) 2012.02.20 Monday
    http://ulalaulala.jugem.jp/?eid=1296

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